スズキ目スズキ科スズキ属
(Lateolabrax japonicus)※
レア度 ★
釣る楽しさ ★★★★
おいしさ ★★★
スズキの基本情報
日本中で魚といえば何?と質問したら5本指に入るのではないかと思われるほどにポピュラーな種です。琉球列島を除く日本各地沿岸~朝鮮半島に生息しています。内湾や岩礁域に多いが砂地や河口域にも見られ、一部地域では淡水域にも侵入します。渓流のような透き通った水の河岸で撮影された画像も見られるほど、アグレッシブに遡上します。個人的にも筑後川水系の支流で釣ったことがありますが、河口から30kmほど上流だったため驚愕しました。ブラックバス狙いだったため、重さと首の振り幅に大きなナマズかと思った記憶があります。

食性に関してはゴカイなどの多毛類、エビやカニなどの甲殻類、イカなどの軟体動物、イワシなどの魚類を何でも食べる動物食性で、目の前で動くものをいくらでも食べるイメージがあります。しかし意外にセレクティブで、ボイルが連発していてもそのとき食べているものにしっかり合わせないと釣れないことも多く、経験すればするほど複雑で、だからこそはまり込んでしまう人も多いのでしょうね。
大きさとしては全長90cm程度に成長し、中には1mを越えるものも存在します。自己最高が85cmぐらいだったと思うので、いつかは1mに挑戦してみたいものです。
出世魚としても有名で、セイゴ(30cm以下)→フッコ(30~60cmまで)→スズキ(60cm以上)あたりがメジャーでしょうか。関西エリアではフッコの代わりにハネと呼ぶそうです。
シーバスと呼ぶ方も非常に多いですよね。
個人的には50cmぐらいまでをセイゴと呼んでしまうこともありますし、面倒なときは全てシーバスと呼んでしまうこともあります。また、ヒラスズキと区別するためにマルスズキと呼ばれることも多いです。

日本で見られる同じスズキ属にはヒラスズキとタイリクスズキ(外来種)があり、更に種としては認められていませんが有明海では数万年前の氷河期に発生した、スズキとタイリクスズキの種間交雑を発端とする交雑種「アリアケスズキ(仮)」もいるんですよ。
スズキのちょっとすごい話
理科的なお話をちょこっとだけすると、生物の分類に関して、界(かい)、門(もん)、綱(こう)、目(もく)、科(か)、属(ぞく)、種(しゅ)という段階があります。通常生物学でも多用するのは目(もく)以下だとは思います。何度か「かいもんこうもくかぞくしゅ」と忍者のふりして唱えれば覚えられるかもしれません。
すごくどうでもいいですけど、光って波長ごとに見える色味が違います。それが見えるようになる現象が虹で、その色は「せきとうおうりょくせいらんし(赤橙黄緑青藍紫)」で覚えられるので、どうでもいいことを覚えたい人はぜひどうぞ。ちなみに釣り人は紫外線と戦わなければいけませんが、目には見えないけれど紫の外側で、より短い波長のものを紫外線(紫外光)と呼びます。逆に赤の外側で、より長い波長は赤外線(赤外光)ですね。魚は波長の長い光が見るのが苦手ということで、赤色のヘッドライトが多用されていますよね。話が逸れすぎました。
んで、ですよ。一番はじめの「界」の時点で恐ろしく説が多くて厄介だし、上の分類はもっと細かくなるんですけど、今回それはまあ置いておきますね。上に当てはめるとスズキ君は以下のように表されます。
動物界-脊索動物門-条鰭綱-スズキ目-スズキ科-スズキ属-スズキ
ちなみに人間(ヒト)は以下の通りです。
動物界-脊索動物門-哺乳綱-霊長目-ヒト科-ヒト属-ヒト
でまあ、スズキ目というのがあるんですが、これに含まれる魚の種類、なんと1万種を越えるんです。すごくないですか?1万種を超えるグループの代表がスズキさんです。
この数、実は脊椎動物全体でも最大の目なんです。もう、スズキ様です。
皆さん、スズキなんてありがちな名前と思うかもしれませんが、敬意を払って下さい。でも鈴木さんへの敬意は皆さんにお任せします。
(現在、スズキ目は2200種程度ということになりかけていますが、まだまだ分類学が動いている最中で、一度分かれたカサゴ目、カレイ目、フグ目なども再度含まれていく可能性が高いようです。詳しく知りたい方は最新の生物分類学を学んで下さい!)

スズキの狙い方
上記のように場所は本当に幅広いです。河口、砂浜、磯、波止。街に近い場所でもたくさんいます。東京湾の荒川や隅田川にもいますし、レインボーブリッジの下にもたくさんいます。エサの幅も広いので、ゴカイ類を投げ込んで狙うこともありますし、生きた小魚を泳がせて狙うこともありますし、生きたエビを船でゆっくり引いて釣る漁もあります。当然ながらルアーのターゲットでもあります。
ルアーも本当に幅広く、ハードでトップウォーター、ミノー、クランクベイトなどからメタルジグ、スピナーベイトなどなど。もちろんワームなどのソフトルアーも山ほどあります。最近は非常に大きなトップウォータープラグでの釣りも流行していますから、何でもありですね。とはいえ、一番釣れる確率が高いのは、使いやすさや手早さも加味すると小魚をイミテートしたミノーではないでしょうか。

既に記しましたけれど、何を投げても釣れるようなタイミングもありますが、そのとき食べているエサをイミテートしたものでなければ釣れないことも多々あります。バチ抜けと呼ばれる、大量のゴカイが産卵のために海底から浮き上がって泳ぎ回る現象が発生しているときは、それらゴカイ類に似せた大きさや動きをするルアー以外には見向きもしません。そういった捕食のセレクティブな面、水面を割るアクティブな動き、都会の岸からも狙える生息域、1mを越えることもあるその大きさ、見た目のかっこよさ、そして白身でクセのない食味など人気があるのも納得ですね。
個人的にスズキを狙って釣りに行くことは、有明海のスズキぐらいです。だって恐ろしく美味しいんですもの。なので、それ以外はメバルやアジをメインに狙っているとき、明暗の境目で見えていたり大きなボイルが起きていたりするとチャレンジする程度。だから狙って釣ることはほとんどないんですが、たまには狙って釣りに行くのもいいな~なんて思っています。
スズキのオススメ調理法
白身でクセの少ない魚なので、正直何をしてもおいしく食べられます。なので代表的なものだけでも挙げておきます。
夏ごろ、更にそのクセ(匂い)を落としてサッパリ食べるため、刺身を氷水に晒してから食べる「あらい」という食べ方は割と独特なものではないでしょうか。夏バテしていてもパクパクと口に運んでしまう、夏の風物詩とも言えます。
ソテーにするだけでも美味しいですけど、ソテー後のフライパンに少々のバターとオレンジジュースを加え、軽くとろみがつくまで煮詰めると美味しいソースの出来上がり。
あと、個人的なお薦めとして、骨や頭、カマなどのアラを使用したみそ汁があります。沸騰したお湯にさっと通してぬめりや血を落とし、あとは他の具と一緒に煮込んでみそ汁にするだけ。
ポイントとしては、骨についた身も具として食べたいので長時間煮込まないこと。だしを取っている途中で他の具もどんどん放り込んで仕上げて下さい。個人的には具の厚みもしっかりしている方が合う気がします。大根や人参は3mmぐらいの分厚い銀杏切りにしてしまいますね。あとは仕上げに大好きなネギを山盛り乗せます。みそは迷われるときは赤系よりも白系の方がお薦め。とはいえ、皆さんのお好みでどうぞ。
みそ汁にしたときに美味しい個人的好みトップ3に入る魚です。ちなみに、あと2種はクロダイとアイゴ。クロダイはスズキと同じ作り方でいいですが、アイゴは水揚げしたら可能な限り早めに内臓を取り除きます。そして強火で軽く焦げるよう焼いてからだしを取って下さいませ。アイゴを見る目が変わりますよ。
ヒラスズキとの比較
最近の記事にも書いたのですが、珍しくスズキとヒラスズキを同時に釣ったので食べ比べてみました。スズキが60cmぐらい。ヒラスズキは45cmぐらいです。

結果。正直、ヒラが断然上だろうと思っていたけど、今回のはスズキとほぼ同等でした。スズキの方が甘味が強くてストレートな感じです。シンプルなので上品といえば上品。ヒラスズキの方が甘味は弱いけれど旨味の複雑さと横向きな広がり方が強い印象です。これに加えて身の食感も違うので好みは分かれるだろうけど、料理によって使い分けてもいいかなと思います。今回、身が柔らかかったスズキは煮付けが見事にハマっていたし、アクアパッツァはヒラスズキのほうがマッチしていました。
今回のスズキは卵巣がかなり小さく萎んでいたものの身の張りはしっかりしていました。1~2月頃の産卵から回復の荒食いでコンディションがよかったのもあるのかもしれません。ヒラスズキの方は腹に脂の塊があったけれど、味が乗ってくるにはサイズ的にももう少し欲しい印象。個人的には今回の比較でも僅かながらヒラスズキが上だったので、コンディションが整った同サイズなら恐らくヒラスズキが圧勝かな。
何度も試してみないと結論は出ないかもしれませんので、研究のためにも早く釣りに行かなければ…。

※学名表記は厳密なルールに従っているものではありません。分かりやすいよう属名、種小名のみを表記しています。
